運命論者である。
人と人との出逢いは、まさに運命だ。
1秒、1ミリ、何かタイミングがずれただけで、
出逢う筈のなかった二人が出逢うのは、
偶然ではなくて必然だった、と私は思う。
5月23日。
一体どうしたら、そこまでダメ人間になれるのかと、
自分でも笑ってしまうほど、あの日の私はクズだった。
クズ要素(1)
職場に財布を忘れた。
クズ要素(2)
それに気づかず先輩と駅前の居酒屋に入った。
クズ要素(3)
支払い時に気づき、翌日の生活費だけ借りた。
そして、
クズ要素(4)
中央線の終電に乗って、寝過ごした。
起きたら八王子駅。
(滞在先の国立から4駅)
たかが4駅と思ったあなた、中央線の23区より西側
というのは、一駅の間隔が、市町村名が変わるほど長いのです。
特に立川から西は、もう歩ける距離ではない。
4駅もあったら、翌朝あけてしまう。
しかしクズ要素(3)に伴い、所持金がわずかである。
タクシーに乗っら最後、明日の生活費がなくなる。
というわけで、一駅でも歩こうと線路に沿って歩き始めた。
しかしここで、 極めつけの
クズ要素(5)
八王子からは「横浜線」という、ぐぐっとカーブして
下に向かって伸びている路線が出ている事を忘れていた。
斯くして、私は全然違う方向に向かって深夜二時、
どしゃ降りの雨の中、八王子を徘徊する事となった。
ばしゃばしゃとぬかるみをあるくこと1時間。
とうとう出て来た次の駅。
当然「豊田」であるはずが、「片倉」???
……
どうやらタクシーに乗るべき時が来たようなので
流しのタクシーに向かって手を上げた。お手上げである。
乗り込んで事情を話すと、八王子から全く明後日の
方向に随分離れてしまっていた私を、不憫に思った
運転手さんは、上限5000円で国立まで乗せてくれる
ことになった。
そのドライバーがただ者ではなかった。
「お客さんは、学生さん?」で始まった、30分劇場である。
私「いや、働いています。大学なんてもう10年も前で」
運転手 「そうですか、若く見えますね」
私「よく言われます(ふざけた格好をしているので)」
運転手「私は大学を中退したんです」
ええ!重い!
運転手「大学2年の時でした。弟が大学受験をしようという
その年に、親父が病気で死にましてね。母親の収入だけで
二人の息子を大学に通わせるのは無理でしたから、私が自ら
辞めたんです。」
それは、弟さん思いな…
運転手「ホテルマンになりまして、しばらく経験を積んでから
独立して、飲食店経営を始めたんです。ちょうどバブルの
絶頂期でしたから、大当たりして、バーとかレストランとか、
いろんな形態で一気に4店舗に拡大しました。」
オーナーさんじゃないですか!
運転手「それは儲かっていまして…ベンツを何台も、乗り回して
いたんですよ。税理士から、月に何百万以上は給料として
取らないように、損をするから…と警告されるくらいでした。」
羨ましいサクセスストーリー。
運転手「そしたらバブルがはじけて、手を広げすぎていた
ツケがきました。他人に任せられるタイプではなく全部自分で
経営していましたから、手が回らなかったのもあり、
一店舗また一店舗と閉じて行き、最後の一つになった時、
妻と離婚する事になり、そのお店を妻にあげて、わたしには
何もなくなりました。」
仕事も、お金も、家族も。
運転手「しばらく廃人のように過ごしていましたが、
あるとき、もう一度自分の空間を持ちたいと思ったんです。
小さくても、自分がオーナーで、お客様が居て、接客が
できる空間を」
そしてタクシーを。
運転手「そうです。ホテルマン時代の接客経験と、
ベンツ時代の道案内のおかげで、完全に歩合制の会社ですが
40万以上の月収があります。お客様と接するのがなにより
楽しいし、天職だと思っていますよ。」
いつのまにか、引き込まれていた。
微笑みをたたえて淡々と話す運転手さん。
タクシードライバー歴5年、一見冴えない彼は、
激動の過去を背負って日野バイパスをひた走る。
午前3時、国立到着。
メーターは5500円。
「ここでお客さんを乗せたのも何かのご縁。
売上はごまかしておきます、また、お会いしましょう」
SANWA TAXI DRIVER。
それは一人の男の、栄光と転落、挫折と再生の物語。
この夏、あなたの街にも、カミングスーン。
人と人との出逢いは、まさに運命だ。
1秒、1ミリ、何かタイミングがずれただけで、
出逢う筈のなかった二人が出逢うのは、
偶然ではなくて必然だった、と私は思う。
5月23日。
一体どうしたら、そこまでダメ人間になれるのかと、
自分でも笑ってしまうほど、あの日の私はクズだった。
クズ要素(1)
職場に財布を忘れた。
クズ要素(2)
それに気づかず先輩と駅前の居酒屋に入った。
クズ要素(3)
支払い時に気づき、翌日の生活費だけ借りた。
そして、
クズ要素(4)
中央線の終電に乗って、寝過ごした。
起きたら八王子駅。
(滞在先の国立から4駅)
たかが4駅と思ったあなた、中央線の23区より西側
というのは、一駅の間隔が、市町村名が変わるほど長いのです。
特に立川から西は、もう歩ける距離ではない。
4駅もあったら、翌朝あけてしまう。
しかしクズ要素(3)に伴い、所持金がわずかである。
タクシーに乗っら最後、明日の生活費がなくなる。
というわけで、一駅でも歩こうと線路に沿って歩き始めた。
しかしここで、 極めつけの
クズ要素(5)
八王子からは「横浜線」という、ぐぐっとカーブして
下に向かって伸びている路線が出ている事を忘れていた。
斯くして、私は全然違う方向に向かって深夜二時、
どしゃ降りの雨の中、八王子を徘徊する事となった。
ばしゃばしゃとぬかるみをあるくこと1時間。
とうとう出て来た次の駅。
当然「豊田」であるはずが、「片倉」???
……
どうやらタクシーに乗るべき時が来たようなので
流しのタクシーに向かって手を上げた。お手上げである。
乗り込んで事情を話すと、八王子から全く明後日の
方向に随分離れてしまっていた私を、不憫に思った
運転手さんは、上限5000円で国立まで乗せてくれる
ことになった。
そのドライバーがただ者ではなかった。
「お客さんは、学生さん?」で始まった、30分劇場である。
私「いや、働いています。大学なんてもう10年も前で」
運転手 「そうですか、若く見えますね」
私「よく言われます(ふざけた格好をしているので)」
運転手「私は大学を中退したんです」
ええ!重い!
運転手「大学2年の時でした。弟が大学受験をしようという
その年に、親父が病気で死にましてね。母親の収入だけで
二人の息子を大学に通わせるのは無理でしたから、私が自ら
辞めたんです。」
それは、弟さん思いな…
運転手「ホテルマンになりまして、しばらく経験を積んでから
独立して、飲食店経営を始めたんです。ちょうどバブルの
絶頂期でしたから、大当たりして、バーとかレストランとか、
いろんな形態で一気に4店舗に拡大しました。」
オーナーさんじゃないですか!
運転手「それは儲かっていまして…ベンツを何台も、乗り回して
いたんですよ。税理士から、月に何百万以上は給料として
取らないように、損をするから…と警告されるくらいでした。」
羨ましいサクセスストーリー。
運転手「そしたらバブルがはじけて、手を広げすぎていた
ツケがきました。他人に任せられるタイプではなく全部自分で
経営していましたから、手が回らなかったのもあり、
一店舗また一店舗と閉じて行き、最後の一つになった時、
妻と離婚する事になり、そのお店を妻にあげて、わたしには
何もなくなりました。」
仕事も、お金も、家族も。
運転手「しばらく廃人のように過ごしていましたが、
あるとき、もう一度自分の空間を持ちたいと思ったんです。
小さくても、自分がオーナーで、お客様が居て、接客が
できる空間を」
そしてタクシーを。
運転手「そうです。ホテルマン時代の接客経験と、
ベンツ時代の道案内のおかげで、完全に歩合制の会社ですが
40万以上の月収があります。お客様と接するのがなにより
楽しいし、天職だと思っていますよ。」
いつのまにか、引き込まれていた。
微笑みをたたえて淡々と話す運転手さん。
タクシードライバー歴5年、一見冴えない彼は、
激動の過去を背負って日野バイパスをひた走る。
午前3時、国立到着。
メーターは5500円。
「ここでお客さんを乗せたのも何かのご縁。
売上はごまかしておきます、また、お会いしましょう」
SANWA TAXI DRIVER。
それは一人の男の、栄光と転落、挫折と再生の物語。
この夏、あなたの街にも、カミングスーン。

