October 29, 2015

中学生演劇指導2

2週に渡って指導いたしました、
白新中学校、演劇発表の本番(=文化祭)が
大成功で終了した模様です。

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本番直前の2週目のレポートです。


私が参上すると、生徒の通用玄関には5枚のポスターが。

きっと、クラスの中に宣伝美術を担当する子も居て、
その子も一つのパーツを背負ってドキドキしたんだろうなと伺える。

演劇は、全員に全く違う担当があるのに、目的は一つ、
という、学校生活でなかなか体験できない「高度な分担」が魅力なのだ。


2週目に生徒たちが見せてくれたものは、本当に興味深かった。


一チーム1時間しか持ち時間が無かったのですが
まず全チーム、30分強の通し稽古を見せてくれ、
残りの時間でそれに対して私がダメ出しをするというスタイルで行いました。


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どのチームも、飛躍の幅が、想像を遥かに上回っていました。


1週間前に棒立ちで並んで、作文発表会みたいに喋っていた子たちが、
生き生きと動き回り、舞台上でリアルな生活の空気を作りだしている。

この変化は、1週間前のちょっとしたアドバイスが
彼らに見事にハマったからです。


私は小口真澄師匠の影響か、「ちょっと身振り手振りを加えた程度で、
基本棒立ちの、理由の無い抑揚でセリフをしゃべる学芸会演出」には
とっても反対です。
 
見ている人が面白くないことは言うまでもなく、
やっている本人たちが全く面白くないはずです。




私が一週目に見せてもらった演技はまさに全クラス、これ。
そして本人たちに悩みを聞くと、「棒立ちになるのを何とかしたい」。

君たちも面白くないことは分かっているのね。

 

そこで今年は、「アクティビティ」という知恵を授けました。
演劇における「アクティビティ」とは、舞台上に居る間、
その人物として何かしらの「作業」を行う、ということです。

例えば、生活態度が悪い中学生役だったら、携帯でゲームをやる、
ジャンプを読みあさる、クリームパンを食べる、とか。
4歳の男の子だったら砂の上に絵を描く、お母さんのスカートの
中に入って遊ぶ、カエルをつかまえていじめる、とか。
お母さんだったらアイロンをかける、父にお酌をする、化粧をする、
とか。


もちろん、それをやりながら、相手のセリフを聞き、自分のセリフも喋る。


人間同士会話するときって、必ずしも相手の顔を見て話さないじゃないですか。
「何かしながら」 話すことの方が多いはずです。
そしてその「何かしながら」を客に見せることによって、
その人物の設定や性格や心情が、よりハッキリ伝わるのです。 

もちろん、何の作業をするかは、彼らにお任せです。
ここに大人が知恵をつけても面白くないのです。
「研究せよ」と課題を出したのです。

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そしたら、これがものの見事に、大当たり。

みんな生き生きと、自分の考えたアクティビティをやって、見ていて面白い!

副産物としては、「作業」によって舞台上での居心地が良くなって表情が出たり、
かつ、重要なセリフのところではキチンと「作業」を中断するので緊張感が出たり。

もっとやりたくなって「こういう人物なんですけど、何をしたら分かります?」って
私のところに聞きに来たりとか、積極性もどんどん向上。



エンターテイメントとしては、格段に向上して面白くなりました。

一週目に、「君たち、全くひとつも面白くないから、お客さん全員帰るよ」
とか酷い事を言ったので、挫けなかった彼らを大いに褒めました。


ただ、問題は、社会派の題材を選んだ3年生チームです。

テーマが難しいのと、原作の長編小説などを自分たちで脚本に直したので
シーンの繋がりや、伝えなければいけない情報が多すぎて伝わらない。 

家族との不仲、家族の死、精神的な障害、肉体的な障害、罪の意識、
などとても繊細な心理描写を描き切るには、本来であれば、
相当高度な演技力と、推敲されて優れた構成の脚本と、
十分な上演時間が必要とされるはずなのです。

色々足りていないのです!


でも、一番大切にしなければいけないのは、彼らの「これを上演したい!」
という熱意。色々足りないのは彼らも分かっているのです。
私はそこに文句を言ったり、指摘するために呼ばれたわけではないのです。

客に伝わるように何とかしろと言われているのです!


3年1組、家庭内暴力を見かねて父親を殺してしまった少年。
友情と再生を描く「4TEEN」。

3年3組、母親からの愛情を得られず失語症に。
三世代に渡る葛藤の連鎖を描く「ハッピーバースデー」。

問題はこの二チーム。


これらのチームの作品では、人物同士の関係をより真実味を持って
見せる必要があると考え、視線の方向、身体の距離、声のトーンに関して
細かく見て行きました。

危機感を体いっぱいに出して、真剣にダメ出しを聞く顔を見ていて、
きっと本番は奇跡を起こすんだろうな、と確信して帰ってきました。



文化祭本番は私、仕事で、観ることが叶いませんでしたが、
先生から、「演じ切りました」とのメールが。

良かった。


これから受験の準備に入り、大変な時期がやってきますが
クラス一丸となって難題に取り組んだ経験が、
きっと彼らを強くしています。支え合えるチームに成長したはず。

彼らの前途に幸多からんことを。


もうすぐDVDが届きます。
彼らの雄姿を見るのが楽しみです。 



過去の記事もどうぞ

私もなかなかに、成長している。みたい。


2011年の演劇指導の記事(これが一回目)

2012年の演劇指導の記事(前編)
2012年の演劇指導の記事(後編)

2013年の演劇指導の記事 









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