September 2013

September 25, 2013

第8回夢ひかり、大成功にて幕。

参加して4年目の、魚沼のキッズミュージカル「魚沼産☆夢ひかり」の
第8弾公演「かいじゅう島のボー」が2回の本公演を無事、終了しました。

毎年、公演の3日前くらいに「間に合わない」と思うのだけれど
今回は「本当に間に合わない」と思いました。
振付の亜矢子とも、冷静に分析し、公演前日、「明らかに例年より
1日ペースが遅れている。間に合わない」と話をしていました。


なんで毎年、こんなに間に合わなそうになるのかと考えて、
間に合うようになる方法はないのかと、考えてみたのですが、
根本的に、絶対無理だと気づきました。

何故かと言うと、原因は、明らかに演出家です。

こちらの演出の小口真澄と言う人は、最初に完成図を描かない人だからです。
彼女は、子どもたちの成長に合わせて、完成図を刻々と変える演出家です。


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その結果、子どもたちは成長し続ける。
それに合わせて、完成図はその一歩先を走り続ける。

目の前にニンジンをぶら下げて走っている馬のようなもので、
これでは、いつまでも完成しないのが当然なのです。
本番に余裕で間に合うということは、すなわち、小口真澄が走るのをやめたということです。
そして、そんな日は、100年、200年待っても永遠に来ないのです。 

最終的に、本番当日が来て、時間切れとなるのですが、
今回なんて、本番の開場中にまで演出変更をされて、勘弁勘弁でした。
 
さて、ここから、今回の私が感動したことをご報告させて頂きます。


①対応する。

こどもたちの対応能力はすさまじいです。
セリフは1ページ2ページが平気で追加され、その場で暗記させられ、
間違うと「一発で覚えて!」と叱られます。
理不尽です。

本番の前日に、役も平気で追加されます。お母さんたちは訳も分からず
物凄い早さで衣裳を作り、子どもたちは早着替えの段取りをして、
ずっと前から決まっていた役のように、堂々と舞台に出ていきます。 

こんな過酷な状況で鍛えられた子どもたちは、その舞台上での
能力もさることながら、舞台裏での行動がさらに立派です。

まず、 


②手伝う。

毎回、スタッフ最少人数で、大掛かりをやろうとするので、人員が不足しています。
今年はそれを主に中学生と高校生がフルサポートしてくれました。
関係者しかわからない用語で恐縮ですが、一端を紹介すると

・寸法を書きこんだ図面をわたすと、それに従って舞台上で採寸し、
舞台装置のバミリ(装置がある位置に印をつけること)を取る。
・間口10間の巨大な高台を、稽古のたびに仮組みしてくれる。
・照明の灯り作りに付き合って、稽古後、夜中まで立ち位置に立ってくれる。
・音響機材の配線を覚えて、稽古のたびにシステムを組み、
・さらに音出しもやってくれる
・早く来て、または遅くまで残って、稽古場の掃除をしてくれる 
・小さい子の袖中での面倒を見て、着替えを手伝う

スタッフは他に何をやっているんですかって感じですが…

これ信じられないですよ。これだけ子どもたちが自分でやる劇団って、
どこにもないです。日本中、どこ探してもここだけだと思いますよ。
全員が舞台監督補であり、音響補で照明補で演出補。
こんなに心強い組織がありますか。
これだけやってくれているのに、まだダメオシで、


③ 感謝する。

この子らの一番すごいところはここだと思っています。

初日の前に、全てのスタッフと父兄を呼び集めて、感謝を伝える。
下手すると感謝状まで持ってくる。
お父さんたちがバラシをしていると、客送りを終えて
一度客席に戻ってきて、「バラシありがとう!」と口々にさけぶ。
お父さんたちも私たちも、「おつかれさま!」とさけぶ。



舞台の美しさ、魅力の全てが、ここにはあるのです。


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お父さん、お母さんたちはド根性です。

私の作った美術プランを見て、「こんなにたくさん作れるか!」と文句言いながら、
それなのに自分たちでも更に「これも要るだろ~」とか言って追加して
自分で自分の首を絞め、稽古の無い平日の仕事終わりも作業をする。

美術の先生をやっているお母さんが、休日返上して炎天下で何日も
パネルを塗る。(途中から、どう考えても必要以上に細部まで拘り始めている)

演出上重要な衣裳がうまくいかず、何度も作り直し、滑り止めやゴムや
いろんな素材で試行錯誤している時に、どんどん役が増え、
30数名の出演者に対して100点以上(200点近い?)の数の衣裳を作る。

「作業が終わらないので劇場に泊まり込みさせて下さい!」と施設担当者に
頼み込むお母さんが出始める。(却下される)

娘は卒業したのにお父さんだけが毎日大道具を作りに通って来てくれる。
さらにそのお父さん、本番をみて自分の作った小道具にダメ出しをして、
「次の本番までにあの部分、修繕しといて下さい」と徹底した拘りを見せる。

綱元をお母さんが手伝ってくれることになり、軽く考えていたらお母さんの方が熱くなり、
「上手く出来ないから明日、朝練お願いします!」とスポ根な提案をされ、
「ブレーキが遅い!停止が美しくない!スピードが一定になってない!」と
初めてなのにガミガミ言われ、自宅の洗濯ロープでイメトレする。

本業が美容師さんのお母さんが物凄い早さで当日のヘアをさばき、
いつもそれで稽古が押すのに10分前には余裕で全員お茶など飲んでいる。
「5分前なんですけど、まだですか~」と口うるさく言いに来た舞台監督を
ギャフンと言わせてお母さん全員でほくそ笑む。

制作サイドの動きは私には見えていませんが、そこにも
大変な根性とドラマがあったのです。


ド根性でしょう。

初めは子どもたちのためにやっているのですけれど、
途中から自分が愉しみだしている、大きな子どもの姿がチラチラ見えるのです。

すばらしいでしょう。



今年、将来本当に舞台人を目指す子たちが出始めました。
「わたし、舞台監督になりたい」と言われたときには、
なんてことをしてしまったんだと思いましたけど…泣けました。

今の流れなら当然と思えます。

そうなってきたのなら、私たち職業スタッフにも、その責任があります。
まだまだ、この子たちのために出来ることがあります。

舞台の作り方、仕込みの進め方も、方向転換していっていいと思う。

本番のステージの上だけが舞台の全てじゃないと知っている子どもたち。
舞台に関わること全てを愛している子どもたち。

スタッフワークを知ることは、必ず役者を大きくします。
大俳優ほど、スタッフへのリスペクトと気遣いを忘れないものなのです。

今回の作品のテーマ、「夢を叶える」。
いや、叶うかどうかよりも、「夢を追う」。

その一歩目が、踏み出せたなら、あとは一直線。

いや、実は一直線になったあとも、迷い、苦しむ。蛇行する。

だけど、その時には、君たちには、仲間がいるんです。
他の人のために、この子たちのために頑張らなくちゃと思えるようになっているんです。


だから大丈夫だよ。


飛ぶよ。


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September 11, 2013

2作品連続上演のお知らせ

て、私が連続しているだけで、なんの繋がりも無いのですが…


ひとつめ

今週末14日、15日は東区市民劇団の市民ミュージカル
「慈眼 ~涌井藤四郎という人~」を、新潟市民プラザで上演いたします。

こちらは江戸時代中期を描いた時代活劇。生バンドのロックミュージカルに
仕上がりました。「明和義人」という、新潟市の中心街で町人のために奔走した
人物の活躍と悲劇の実話です。

こちらは市が協力バックアップをしてくれています。市のホームページ参照
なかなか60人の市民が参加するロックミュージカルはないです。
ぜひお運びください。


ふたつめ

来週末21日、22日は小出のスーパーキッズ、魚沼産☆夢ひかりによる
第8弾公演「かいじゅう島のボー」魚沼本公演です。

毎年この子どもたちの成長ぶりは驚愕に値しますが今年もヤバい。

新しい小学生メンバーが大量に入ってくれて、
賑やかさがパワーアップ、袖中で舞台監督は保母さんと化す……

かと思いきや、先輩小学生と中学生高校生がばっちりケアをしてくれ、
何の心配も要りませんでした。

聞いて下さいよ。

なんと大道具の仮組みから舞台上のバミリ取り、果ては音響機材の
セッティングから音のたたき、さらには大道具転換(綱元以外)まで、
すべて子どもたちなのです。

あり得ない!!!
6×6の平台持つんですよ、中学生が!!!二人で一枚!!

どこまでいっちゃうんだ、この子たち~~!!!


ぜひ、見に来て下さい。
チケットはこちらから。東京からも大歓迎です。


これ、大道具原案わたしやらせてもらっているんですが、
今年は調子に乗って増やしすぎて、さらにその後演出家から
追加オーダーがあれこれ入った結果、ものすごい物量になってしまい、
パパママは全ての休日と仕事後の平日夜も作業を続行中。

ごめん!!!!

月曜日は罪滅ぼしに私も作業してきました。
魚沼での仕事は本当にすがすがしいな!


では、本日より怒涛の2連続ミュージカルの仕込みに行ってきます。

ん?今日はどっちを仕込むんだっけ…

ん??

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September 04, 2013

演劇大学 in にいがた

「演劇大学 in にいがた」に参加してきました。

日本演出者協会が2001年から開催している、
全国に若手演出家を育てるためのワークショップ・ツアー
のようなものです。

オフィシャルサイトはこちらです


今まで知りませんでしたが、驚異のペース(年9回ほど)各地で
開催されています。

たまーたま、資料を探しに入った歴史資料館でチラシを見つけました。
4日間の日程でしたが、仕事の都合で平日2日間だけ参加。

著名な演劇人が講師を務めて下さり、6つの講座が開かれます。

ディスカッションをする講座、演出と演技をする講座、子供向け講座など
あの有名なあの脚本家が!あの劇団の主宰が!みたいな、
なんともぜいたくな講師陣でお届けされました。

私はスタニスラフスキー・システムの体験講座(発声、動き)
2日間で3分間の脚本を書く講座、あと日本とロシアの演劇史を受講。

今回、新潟と言う土地柄なのか全体的に「ロシア演劇推し」でした。
日本演劇史の先生の言葉を借りると、演劇をきちんとやりたい人は
イギリスでもアメリカでもなく、「ロシアに行け!」なんだそうです。

目からウロコの内容でした。

日本って、歌舞伎や能という立派に歴史がある舞台文化を持ちながら、
演劇をきちんと教えてくれる教育機関少なすぎますよね。
大学で、舞台芸術科とか演劇科とか、それに類する科は数えるほどしかない。
これすなわち、演劇がまだまだ市民権を得ていない証拠と思う訳です。

アメリカで演劇をやっている人たちは、職業俳優でない小劇場の人たちに至るまで、
お金をとって見せる公演の出演者はかなりの数が大学で演劇を勉強しています。

そのようにして知識と基礎を身に付け、エクイティという舞台人協会の会員になり、
エクイティが舞台人の労働条件を守る(不当に長い労働時間や、安すぎる賃金で
舞台に立つということが無いように)というシステムがあるのです。

アメリカで演劇修業をしていた頃、私が音響オペをやっていた劇団は、
出演者が20人くらいいたのですが、その日の客が20人を切っていた。
そうしたら、エクイティの規則で、客の数が出演者数を下回っている時は
公演をしてはならないという項目があり、それに乗っ取って、休演になった
ことがありました。10名ほどの客が客席に座って待っているにも関わらず。

日本ではありえないですよね~
日本だと「一人でも、お客さんが居れば!」って全力で公演すると思うんですけど、
結局アメリカの場合は、それは見返りが少ないのに働かされる不当な労働、
と見なされてしまうんですね~

しかしそれによって、日本の演劇の「もうからない、身銭を削って公演をうつ」という
悪しき宿命を打破し、結果的に演劇の社会的地位を保っているということです。 

それに比べると日本は余りにも後進国だよね、という話。
(これが日本演劇史の授業において説かれた意見の一つ。)


話がそれましたが、アメリカではそうだし、ロシアでも、大きな公演で演劇をやる人は
みんな基礎を大学で学んだプロフェッショナルな人たちなのだという。

スタニスラフスキー・システムという、現代演劇を行う人が当然のように実践している
体系的な演技術を確立したスタニスラフスキーさんも、ロシア人です。

スタニスラフスキー・システムとは何かと言うと、「潜在意識」を動かして演技や表情を
よりリアルに見せるという演技手法です。歌舞伎のような様式芝居とは根本的に違います。

この潜在意識を動かす、という行為は、やろうとしても意外と難しい。
つまり、共演者と舞台上で実際にコミュニケーションをとって、
本当にその場で心を動かす、ということなんですが

大学の時に演技をかじっていたことがありまして、このときまさに、
演出家がスタニスラフスキーを実践しようとして訓練して下さいました。
しかし私がこれ、出来ない出来ない。頭で演技をプランしすぎちゃっていたり、
緊張、不安、恐れとか自己顕示欲とかによって、潜在意識は動きづらくなります。

しかし、動いた時は誰が見てもわかるほど、その演技は生き生きとして面白い。

さらに、そのようにリアルに心が動いたとしても、日常会話ではなく役者として、
セリフははっきりと言わないといけないし、ミュージカルだったら不自然にも歌いだしたり、
リアルじゃない行為もちょいちょいやらなくちゃいけない。

訓練が必要な技術なのです。

「この俳優は本当に心が動いているかな?」という視点で舞台を見ると、
それが出来ている役者さんというのは日本の場合、プロでも一握りだと思います。
新潟の地元劇団の舞台や、専門学校の授業を見てきて、一番もどかしいのは
この技法、全世界であまりにも当然のごとく基礎だとされているこの技法が、
まったく浸透していない、軽んじられていることが、私は以前からの不満です。

この技術の習得には訓練が必要だし、ちゃんと習得した指導者によって
教えてもらう必要があります。

なんにせよ、「基礎」をきちんとやるべきだ。

演劇だってそうだと私は思っています。俳優は訓練を積んだプロが、
その技術を使ってお金をとるべきだと思うから、私は演技はしないのです。
だけど市民が心の豊かさの向上のため、演技に挑戦するのは、大いに
応援したいと思っている次第です。

あ、またそれましたが、

講義はこれだけではありません。

日本の演劇史なんて面白かったなあ。
飛鳥時代から江戸時代までの歴史、かいつまんで教えてもらいました。

戯曲を書く練習も面白かった。「面白いタイトル選手権」という企画を
先生がやってくれ、誰が一番インパクトのあるタイトルを思いつくか?とか。

短編、中編、長編の書き方と、それぞれの作戦の立て方とか。

ぜんぜん演劇を知らない人でも、高校生から高齢者まで楽しめる
講座だったと思います。もっと宣伝してほしかったなあ。
新潟の場合、関係者だけが寄り集まってしまうのが大きな問題のひとつと
思っていますので、こういう多角的に演劇を捉えられる機会に新規層を
開拓すべく、演劇ファンを増やすべく、チャンスとして使いたいです。

あと、どうせ関係者がたくさんくるのであれば、地方で弱い制作の部分とか、
スタッフワークの部分とかを補強する講座も希望。
演出者協会関係ないかもしれないけど、同時開催で…ぜひ。

来年、再来年と続くという話も聞きました。ぜひ頑張ってほしいです。
協力いたします。
 

nanaibashi at 07:37|PermalinkComments(2)TrackBack(0)
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