October 2015

October 29, 2015

中学生演劇指導2

2週に渡って指導いたしました、
白新中学校、演劇発表の本番(=文化祭)が
大成功で終了した模様です。

2015-10-21-14-38-16

2015-10-21-14-37-36

本番直前の2週目のレポートです。


私が参上すると、生徒の通用玄関には5枚のポスターが。

きっと、クラスの中に宣伝美術を担当する子も居て、
その子も一つのパーツを背負ってドキドキしたんだろうなと伺える。

演劇は、全員に全く違う担当があるのに、目的は一つ、
という、学校生活でなかなか体験できない「高度な分担」が魅力なのだ。


2週目に生徒たちが見せてくれたものは、本当に興味深かった。


一チーム1時間しか持ち時間が無かったのですが
まず全チーム、30分強の通し稽古を見せてくれ、
残りの時間でそれに対して私がダメ出しをするというスタイルで行いました。


2015-10-22-16-04-29

 

どのチームも、飛躍の幅が、想像を遥かに上回っていました。


1週間前に棒立ちで並んで、作文発表会みたいに喋っていた子たちが、
生き生きと動き回り、舞台上でリアルな生活の空気を作りだしている。

この変化は、1週間前のちょっとしたアドバイスが
彼らに見事にハマったからです。


私は小口真澄師匠の影響か、「ちょっと身振り手振りを加えた程度で、
基本棒立ちの、理由の無い抑揚でセリフをしゃべる学芸会演出」には
とっても反対です。
 
見ている人が面白くないことは言うまでもなく、
やっている本人たちが全く面白くないはずです。




私が一週目に見せてもらった演技はまさに全クラス、これ。
そして本人たちに悩みを聞くと、「棒立ちになるのを何とかしたい」。

君たちも面白くないことは分かっているのね。

 

そこで今年は、「アクティビティ」という知恵を授けました。
演劇における「アクティビティ」とは、舞台上に居る間、
その人物として何かしらの「作業」を行う、ということです。

例えば、生活態度が悪い中学生役だったら、携帯でゲームをやる、
ジャンプを読みあさる、クリームパンを食べる、とか。
4歳の男の子だったら砂の上に絵を描く、お母さんのスカートの
中に入って遊ぶ、カエルをつかまえていじめる、とか。
お母さんだったらアイロンをかける、父にお酌をする、化粧をする、
とか。


もちろん、それをやりながら、相手のセリフを聞き、自分のセリフも喋る。


人間同士会話するときって、必ずしも相手の顔を見て話さないじゃないですか。
「何かしながら」 話すことの方が多いはずです。
そしてその「何かしながら」を客に見せることによって、
その人物の設定や性格や心情が、よりハッキリ伝わるのです。 

もちろん、何の作業をするかは、彼らにお任せです。
ここに大人が知恵をつけても面白くないのです。
「研究せよ」と課題を出したのです。

2015-10-22-13-36-58


そしたら、これがものの見事に、大当たり。

みんな生き生きと、自分の考えたアクティビティをやって、見ていて面白い!

副産物としては、「作業」によって舞台上での居心地が良くなって表情が出たり、
かつ、重要なセリフのところではキチンと「作業」を中断するので緊張感が出たり。

もっとやりたくなって「こういう人物なんですけど、何をしたら分かります?」って
私のところに聞きに来たりとか、積極性もどんどん向上。



エンターテイメントとしては、格段に向上して面白くなりました。

一週目に、「君たち、全くひとつも面白くないから、お客さん全員帰るよ」
とか酷い事を言ったので、挫けなかった彼らを大いに褒めました。


ただ、問題は、社会派の題材を選んだ3年生チームです。

テーマが難しいのと、原作の長編小説などを自分たちで脚本に直したので
シーンの繋がりや、伝えなければいけない情報が多すぎて伝わらない。 

家族との不仲、家族の死、精神的な障害、肉体的な障害、罪の意識、
などとても繊細な心理描写を描き切るには、本来であれば、
相当高度な演技力と、推敲されて優れた構成の脚本と、
十分な上演時間が必要とされるはずなのです。

色々足りていないのです!


でも、一番大切にしなければいけないのは、彼らの「これを上演したい!」
という熱意。色々足りないのは彼らも分かっているのです。
私はそこに文句を言ったり、指摘するために呼ばれたわけではないのです。

客に伝わるように何とかしろと言われているのです!


3年1組、家庭内暴力を見かねて父親を殺してしまった少年。
友情と再生を描く「4TEEN」。

3年3組、母親からの愛情を得られず失語症に。
三世代に渡る葛藤の連鎖を描く「ハッピーバースデー」。

問題はこの二チーム。


これらのチームの作品では、人物同士の関係をより真実味を持って
見せる必要があると考え、視線の方向、身体の距離、声のトーンに関して
細かく見て行きました。

危機感を体いっぱいに出して、真剣にダメ出しを聞く顔を見ていて、
きっと本番は奇跡を起こすんだろうな、と確信して帰ってきました。



文化祭本番は私、仕事で、観ることが叶いませんでしたが、
先生から、「演じ切りました」とのメールが。

良かった。


これから受験の準備に入り、大変な時期がやってきますが
クラス一丸となって難題に取り組んだ経験が、
きっと彼らを強くしています。支え合えるチームに成長したはず。

彼らの前途に幸多からんことを。


もうすぐDVDが届きます。
彼らの雄姿を見るのが楽しみです。 



過去の記事もどうぞ

私もなかなかに、成長している。みたい。


2011年の演劇指導の記事(これが一回目)

2012年の演劇指導の記事(前編)
2012年の演劇指導の記事(後編)

2013年の演劇指導の記事 









October 15, 2015

中学生演劇指導

今年も白新中学校の文化祭の季節がやってきました。


昨年の3学年、2クラスの指導が好評だったのか…

ことしは全学年見て下さい!とのお達し
嬉しいことです。


image

台本5冊。



しかも今年、とっても社会派の題材が多い。

以前は「泣いた赤おに」「最後の一葉」など、割と誰でも知っていて、
演劇として成りたちやすい作品が多かったのですが、

2年前あたりから、「いじめ」や「家庭崩壊」などの
デリケートなメッセージを持つ社会派ドラマが増えて来ました。

この台本選びは、生徒たち自身が行っているのだそう。
なんて問題意識が高いんだ!

でも~~

演劇指導者の手に余る~~!!!



とは言えないので、こちらも勉強して臨みます。


1年生、セロ弾きのゴーシュ。

これは演出によって伝えたいテーマや視点が全く変わってくる、
意外と難題。宮沢賢治の詩的で厳選され謎めいた言葉を、
いかに解釈するかがポイントだ。宮沢賢治はなぞなぞの世界。


2年生、太平洋戦争をテーマにした家族愛の作品。

戦後70年…これ現代の子がやるの、まず選定理由に興味あり。
リアルタイムで戦争を知らないから私も手探りですが
戦争三部作で味わった、あの緊張感を出せるかが肝。
これから拝見してきます。


3年1組、父親殺しの中学生をとりまく友情物語。

原作は石田衣良の4TEEN。この心の機微は難しい…
同年代を演じる難しさ。自分の感情を利用できないと、非常に嘘っぽい。
「仲よさそうな演技が出来ないんです…」に対して、
「君たち実生活で本当に仲いいの?」から入って生徒指導室状態に。
難題です。
 

3年2組、ライフイズビューティフル。

映画も有名な、迫害されるユダヤ人一家の愛と機転と悲劇の物語。
これは今度、自分と違う年齢、人種、思想をどうやって表現するか。
「5歳に見えないんですけど…」中学生だもんね。
「父親に見えないんですけど…」15歳の女子だもんね。
研究するという宿題がたくさん。


3年3組、母に愛されず失語症になった少女の物語。

これも社会派ドラマ…これから指導に行くんですが、
単純にハッピーエンドを目指せばいい話でもなく、
それぞれが相手役に向き合う姿勢を細かく見てあげなくてはいけない、
これも難題になりそうだ。
 


時間の無い授業のカリキュラムの間を縫って制作しているため、
各チーム1時間程度しか取れず、指導はピンポイント!
となってしまうのですが、昨日一日目行った感触では、
とにかく楽しさを掴んでくれたら、あとは化学反応が勝手にすすむ。

各チーム、今週と来週の二回ずつ見てあげられるので、
宿題を一杯出して、来週を楽しみにして行きます。 



私も、一瞬で状況を把握しなければ。
先生、腕の見せどころ。 

October 03, 2015

東京タラレバ娘

すごい破壊力の漫画に出逢ってしまった


2015-08-31-12-43-28
 


「東京タラレバ娘」 東村アキコ著


たれれば


これはマズイ…これはマズイ…
読後感が悪い、を通り越してめまい、頭痛、吐き気…

仕事と女子会に明けくれて
「あのとき、あっちを選んでいレバ…」
「もし、私があの子みたいだっタラ…」
と過去や妄想を肴に、笑ったり嘆いたり飲んだり、しているうちに

気づいたら立派な独身アラサー女子になっていた倫子と他2名。



たられば

(↑ 画像をクリックすると少し大きく読めます)


おいおい…


見覚え聞き覚えのある話だよ…


これ、モデルわたしじゃない?!!


と本気で勘違いしてしまうような
鋭くえぐる、えぐられまくってダメージ大きすぎる、

ああ。

そんなマンガに出逢ってしまったのです。



たられば2


実際、「女子会ばかりやっている女は結婚できない」という
統計もありますね。

はい、私、先週も大型女子会を楽しんできたばかりです。


たられば3


これを貸してくれた、同級生のI子に、「ホラー!まじホラー!
怖くて死にそう!もう立ち上がれない!」と読了後メールし
「naco大丈夫だ、それ、マンガだから!現実じゃないから、ね!」
と本気で心配され慰められる始末。


真面目に生きてきた、
同期の男に負けまいと仕事頑張ってきた、
まだ恋愛や結婚より大事なものがあると上ばかり見てきた、


そして気づいたら、アレ?



ってなっている女子、多いと思うんです。

そして、ちょっと焦って周りを見ると…、


なーんだ、同志がたくさんじゃん、みんな同じじゃんてことに安心し、
女子会で情けないよね~なんて半分以上本気で言いながら
負のスパイラルから抜けだそうともせずに歳を重ねてしまう。


どーん…

分かっては居るのですよ…



言葉にしたり、マンガにされたり、されるとさあ。



日本の女性観は、今過渡期だと思うんですね。

自立して、一人の人間として独立して、職を持って働き
生きていけるよう、法や職場環境などは整ってきているものの
まだ人の意識(特に女性たち自身)のは脱皮していない。

のかもしれません。

そう、特に、女性たち自身の!!!



と屁理屈を捏ねたところで…


たられば4


この破壊力に、お手上げだ…





4巻を読むのが怖い…

しかし、私にとっては、もはや予言書。
早く出てくれ、4巻よ!!

 

::::最近のコメ::::