April 08, 2009

観劇レポウト『ひかりごけ』

わたしは、いかなる状況に於いても、
人肉を喰わない、と言い切れるのか。



昨日、劇団四季の「ひかりごけ」を鑑賞しました。
衝撃的な作品でした。


1943年、実際にあった「ひかりごけ事件」をモチーフにした、
武田泰淳の戯曲である。


冒頭、焚き火の中に、4人の疲れ果てた男たちの顔が浮かび上がる。


極寒の海で、陸軍の徴用船が難破する。
船長と3人の乗組員が無人島に流れ着き、飢えと寒さで一人が死ぬ。
それを食べなければ死ぬという極限状態における葛藤の中、
残った3人は決断を迫られる、、

というストーリーである。

1幕は、人間の醜さ、切なさ、尊厳など、目を塞ぎたくなる
ドロドロしたものをさらけ出しながら、ひとり、またひとりと
死んでいく。船長のみが生き残って幕が下りる。
2幕は一転して法廷。彼を裁く裁判のシーンである。



この舞台はもの凄い。
ストーリーもさることながら、目を見張るのは舞台美術だ。


皆さんは一体、上のようなストーリーラインを読んで、
このふた幕をいずれも、この↓写真のような舞台装置で
やる事を、思いつくだろうか!!!!!


2045973c.png


(劇団ホームページより)



これは日本の舞台美術史の最重要人物である、
故・金森馨(かなもり かおる)氏の代表的な作品で、
直線と円のみを用い、強いパース法でデザインされた
前衛的な抽象舞台なのであります。


孤島に隔離された人間の恐怖や孤独、
法廷でやはり「普通の人間」たちから隔離された男の絶望と忍耐を、
この白い箱一つで、もっのすごく明らかに見せてしまった。


日下さんが演じると、この装置が不自然じゃない。
日下さんが台詞を語ると、何もかもが明白なのだ。




劇団四季の本当の財産。
ここで働く者にとっての誇りと魅力。

それは、俳優 日下武史氏や、美術家 金森馨氏、照明家 吉井澄雄氏ら、
日本の新劇界を創って来た偉人たち、とその作品たちと仕事ができる、
今でもまだ現役でこういう芝居を世に出せる、まさにそういうことである。
それを大切に守っている演出家 浅利氏にも、畏敬の念を禁じ得ない。


先輩方はすげえアーティストたちなんです。


みなさん、お時間ありますか?
見て下さい。
ぜひ、見てほしい。


これ、たったの7回公演。

満席完売になったって赤字ですよ。
でもやるんですよ。
世の中の人に、見せなきゃ行けないからです。

12日までやってます。
7000円は決して高くない!!!


ひかりごけ公式HP。

この記事へのコメント

1. Posted by 狐豊@あんかーわーくす   April 08, 2009 09:49
うおっすごく観劇したい!
あぁ仕事さえ無ければ確実に見に行きます。
ひかりごけ事件をどう表現して作っているのかめちゃくちゃ気になります。
あぁぁぁみたい!
2. Posted by naco   April 09, 2009 01:42
〉狐豊さま
ご無沙汰しております!(しかしどなたか特定デキズ…調べます!)
そんな方にこそ、めちゃめちゃ見て頂きたいのですー。
お仕事とのこと、残念ですが、本も出ていますし
きっとチャンスありますよ!
「ひかりごけ事件」の実際よりかなり脚色されて
いるため、こちらが事件の真相であるように
世間に記憶されてしまった悪い例らしいですが。
人間の本質を考えさせるプロットになっています。
3. Posted by naco   April 11, 2009 07:02
富士山さん?

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