August 17, 2012

アプリコット新発田公演によせて

新潟市芸術文化会館「りゅーとぴあ」の擁する
プロ指向のキッズミュージカル「アプリコット」。 

連日立ち見を出す満員御礼だった三日間の新潟本公演を終え、
明日から新発田へのツアー公演に臨みます。


というわけで本日は、「ツアーに出る」ということについて考えました。


魚沼のキッズ・ミュージカル「夢ひかり」の子供たちは、
なんだかんだで毎年東京や県内の都市でツアー公演をしており、
若いのにツアー慣れをしている、打たれ強い子供たち。

劇場のサイズや条件の違いを良く理解してくれ、どんな過酷な状況でも
落ち着いて着替えをし、自分たちでスタンバイやタイミングの変更を
考えて対応してくれます。

物語を進めるのに何が必要か、という本質と、
「いつもやってることを何となくやる」という惰性との区別がハッキリ
つけられる子供たちです。


さて、明日からアプリコット諸子が向かう新発田は、かなり歴史の
ある市民会館で、舞台のサイズがりゅーとぴあとは随分違います。

袖中(舞台の両脇の、客席から見えないポケット部分)の面積が
舞台上と同じくらい広いりゅーとぴあに比べ、袖中に隠れたらすぐ壁、
というのが新発田の劇場。

本拠地公演と比べると様々な変更が出るのは当然ですが、
当然ツアーですから、何日も新発田に行って稽古をできるはずも無く、
子供たちは着いたその日に昼公演。慣れる時間はもらえません。

そのような理由で、昨日と今日は、広いリュートピアを新発田の会館に
見立てて、カラーコーンで柵を作り、障害物を置いての稽古をしました。

「エッ、狭い!」「何、これしかないの?!」という驚きと焦りの声の連続で、
これはまずい、と思ったとき、私が心の師と仰ぐ、夢ひかりのスタッフさんの
言葉を思い出しました。

「古くて狭い劇場に行った時、決してセマイ、キタナイと言ってはいけない。
その劇場は長い間、その地域の人たちに愛されて、スタッフたちが大切に
大切に手入れしながら使われてきた小屋だから、その劇場には神様が住んでいる。

その劇場の神様に嫌われたら、公演は失敗する。
そのかわり劇場の神様を味方に付けたら、
魔法のように素晴らしい舞台を一緒に作ってくれる。」

という言葉です。


夢ひかりの子たちは、この思想は言われるまでもなく持っていたので、
私がその話をしたときは「それはトーゼンだね」っていう反応だったのですが(笑)

あ、もしかしたら、アプリコットのみんなは、ツアー慣れをしていないかも
しれないな?!と思い、

「みんな、新発田に行ったら、絶対に狭いって、言うなよ」と切り出しました。
はじめ子供たちは全員、キョトンとした顔をしましたが、
私たちが貸してもらう劇場は、その街の人たちが大事に大事にしている場所。
私たちにとっての障害物は、他の人にとっては必要なもの。

だから劇場と、劇場にあるすべてのものは、リスペクトしなくちゃいけないの!
私たちにとってりゅーとぴあが、大好きな劇場であるのと同じように、
新発田の劇場は新発田のひとたちが大好きな劇場なの!
そんな劇場で公演させてもらえるなんて、ワクワクするね!

って言ったら、

キョトンとしていたみんなの顔がパーッって明るくなって、
何人かはウンウン、って笑いながら頷いてくれました。

うわ、伝わったー…って思いました。


以前、ロンドンにWICKEDを観に行った時、舞台裏を見せてもらったことが
あったのですが、りゅーとぴあよりよっぽど狭い袖中で、
「エー!!世界のウェストエンドがそんな袖中でやってんの!!」と
思ったことがありましたが、実はロンドンもブロードウェイも、
お客さんに見える部分以外は本当に冗談のように小さく、

モーターを使って、天井から吊るして3段重ねにして収納したり、
分解して畳んで隙間に収納したりと、
それはそれはスタッフさんたちの工夫と努力によって
劇場を見事に味方につけているんだなあって思ったのです。
 
 
明日はスタッフだけでの仕込み。

明後日、アプリコットのみんなを無事に迎えられるように
まずは誰よりも私たちが、劇場の神様と仲良くならなければ。

確実に愛される子供たちだと思います。大成功を祈って。

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この記事へのコメント

1. Posted by rz   August 21, 2012 22:02
魔法の言葉だ。



あ、新発田のそこ、学生時代に五輪真弓さんがコンサートに来た時一日バイトしたとこですだ
2. Posted by naco   August 27, 2012 22:12
>rz

遅くなりました!!

よく覚えていますな~~
スタッフさんて、本当によくツアー先の劇場を
記憶しているよなあ。
「新潟県民会館の、下手の奥のアレ、困っちゃうよねー」とか
東京のスタッフさんに言われると仰天ですよ。
それこそ友達になるのでしょうね。
リスペクト、リスペクト。

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