August 07, 2013

女川公演レポート

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奇跡のような二日間のご報告を。


宮城県牡鹿郡女川(おながわ)町は、石巻市の北に隣接する港町です。

その街を見下ろす高台「まるこ山」にある、女川中学校。
この周辺地域、離島などの3校が合併された、生徒数200名の学校です。
そこへ、行ってきました。

女川中学校の公式ホームページはこちら。公演の情報も出ています。


新潟市からは、磐越道で郡山まで、そこから東北道に入って仙台まで、
そこまでならおよそ3時間で着くのですが、

そこから石巻までが1時間近くかかり、
さらに石巻から北上して30分ほど。自動車道は完璧に整備されていても、
普通にそれだけかかるということです。

ナビのついていない、会社の車で行きました。
事前に地図は調べて行ったのですが、スマホでナビが使えるし、
と気楽な感じで朝6時半に出発。

しかし不思議なことは、順調だったスマホのナビが、
仙台から急に電波が悪くなりストップ。
手探りで女川を目指すことになりました。
何度も道が分からなくなり、結局6時間近くかかって
12時に女川に到着。

この街には、覚悟がない奴は入れないよ。

と言われていたのです。後から考えると。


石巻までは、新潟と変わらず活気ある平和な景色が続いていました。
でも、とある交差点を女川方面に曲がったところから、
一気に殺伐とした空気に。

女川市街地まで、ザラザラの風景が続く。
新築したばかりの会社の建物を、途中ひとつ見かけただけで、
まだまだ重機は建て物を建てるより、地ならしの作業に忙しいように見えました。

実際、倒壊した廃屋も、まだまばらに見える。
復興は、私が想像していたよりずっと、気の遠くなるような長い道のりだったのです。

震災で恐ろしい被害を受けた。
そしてそこからの復興は、あたらしく1から作り直すこと、
と思っていたのです。

でもとんでもない。マイナスをゼロまで戻すことの方が、
途方も無い労力と、時間と、精神力が要るのです。

この街は、ようやく、ゼロ近くまでやってきたところ。
ザラザラの景色まで、ようやく、這いあがってきたところだった。

もし被災直後の女川の様子をご覧になりたい方、
「なっちんの写真館」様に当時の様子を鮮明に伝える写真があります。
こちらのブログ、訪れて見て下さい。
冒頭の写真の場所が、どれほどの状態からあそこまで来たかが分かります。
※ちなみに冒頭の写真、中央の建物は、横倒しになっています。



さて、女川町にはいったけれど、一体中学校がどこにあるのか分からない。
途中、工事現場のおじさんに聞こうと、車を止めると、
現場のフェンスの隣に、コンクリートブロックを重ねた簡素な「献花台」。
花は持っていなかったけど、手を合わせました。

工事のおじさんは丁寧に道を説明してくれました。
指の先には海と街を見下ろす高台「まるこ山」。その上に白い建物が見えました。
それが女川中学校でした。

先生と、生徒たちが待っていてくれました。

10名の出演者を載せた車も、ほどなく到着。

生徒たちはもちろん、先生たちまで誰もがおどろくほど明るく、優しい。
先生とPTAのお母さんたちが、校舎の裏の畑で取れた野菜をたくさん使って
美味しい手料理を振る舞ってくれました。

今回は震災後にここの生徒たちと交友を深めて
チャリティCDなんかも作ったこの出演者たちが、
その後も親交を温め続け、いよいよ満を持して迎えた遠征公演。

プロのスタッフは最小限ですが、生徒たちはやるき十分。
舞台監督助手チームは5人。他に受付チーム、演出助手チーム、
とたくさんの子どもたちが役割を決めて待ち受けていました。

子どもたちに指示を出して動いてもらう、というのは意外と難しい。


でも強行日程で膨大な作業量をこなすには、彼らに効率よく
動いてもらわねば間に合わない。かなりの賭けでした。

でも彼らは素晴らしく動いた。まず初対面の人に対する不必要な壁が無い。
そして、皆が自主的に動く。これは、被災した彼らの武器です。
これから一生の宝になるでしょう。

そして、もちろん夢ひかりを経験している私が、中学生の能力の高さを
よく知っている、ということも吉と出た。
先生たちも、一緒になって知恵を出して、大汗かいて働いてくれた。
最後は中学生に「ナナちゃん!!」と呼びつけられる始末。

なんとかギリギリ、会場が整って、じゃ、最後の15分で、
みんなでステージを水ぶきだ~と集まった瞬間、


震度5の、巨大な揺れ。


体育館がワッサワッサと揺れ、天井からバラバラバラ!!と
白い建材のかけらが降ってきた。
一瞬で戦慄しました。記憶が蘇りました。あの日の。
思わず、叫びそうになりました。パニクりそうになりました。


しかし、女川の中学生と先生たち。
ゆっくりと静かに、


「お~。外、出ようか。」


そして、みんなで落ち着いて、グランドへ出ました。
先生たちは、焦る様子も無く、携帯とテレビで情報を確認。
その間、信頼してゆったりと待つ、生徒たち。

「津波の心配は、ありません」
「今のは、震度5」
「でも、余震来てるから、もうちょっとここにいましょう」

情報が来て、みんなハーイと素直に、談笑しながら待つ。


開場直前だったけれど、こんな時急いでも仕方ないと私も落ち着きを取り戻す。

むしろ、本番中に今くらいの地震が起きたらどうするか?というシュミレーション、
開演前に、お客さんにひとこと、緊急時の行動を予告しよう、という段取りを、
先生方&プロデューサ―と打ち合わせすることが出来てラッキーでした。


強い。

ここの人たちは、子どもも大人も、人間として強い。
あの津波のあと、何度となく繰り返された余震、
今もいやというほど頻発する震度の高い揺れに、
彼らは鍛え上げられ、危機意識を日常的に持ち、
冷静に、むしろ笑顔で、困難に向き合えるに至ったのだ。



不謹慎な物良いですが、この時、揺れが来たのは、
この土地に来てまだ甘えようとしていた私たちへの戒めであり、
この土地で苦難を乗り越えた人たちの強さを私たちに見せてくれるための、
天からの(地から、か)贈り物だったのです。

「お前たちは何しにここに来たのか、思い出しなさい」という。


良かった、

あの揺れが無ければ、私は大切なものに気づかずに帰ることになったと
思います。自分の力では気が付けずに。

ファンがたくさんいるというこの団体の特性上、
地元のお客さん方ばかりではなく、全国からツアーバスをしたてて
女川入りしてきた、被災地初心者のお客さん方が大半でした。

お客さんもまた、会場にたどりつく直前にあの揺れを体験し、
異常な緊張感を持って来場しました。
これ以上ない、こころが一つになった会場が出来つつありました。


本番は、いつものことながら、必死。

熱中症が出そうな真夏の体育館で、客席にも出演者にもドキドキしながら、
今朝決まったばかりの段取りに目を白黒させながら、
汗でマイクが次々とNGになって応急処置の嵐に吹き飛びながら、
必死で駆け回りました。

でも、やっぱりここでも驚いたのは、中学生。

わたしの助手で裏に入った5人。

昨日は照れてばかりで説明もまともに聞けなかったのに、
トランシーバーを渡して、役割を割り振って、台本に書き込ませると
本番が近付くとともに、ハッキリ変化の過程がわかるほど
キリッと引き締まった裏方の顔になっていくのが分かりました。

集中力と、緊張に対する耐性がある。
惚れ惚れしました。


色々あったけど、良い舞台だったと思います。
最後はみんなで大合唱。カーテンコールをやって、
お客さんを送り出し、揺れが来なかったことに感謝し、幕となりました。

みんなで片づけをやって、先生たちがかき氷と流しそうめんを
作ってくれて、暗くなるころ、手を振って街を出ました。

被災したことに甘えてはいけない、と先生が生徒たちに言っていました。
あの元気な子たちの中にはきっと、家族や友達を津波で失った
子もたくさんいたことでしょう。

それでも先生は、それに甘えるなと言う。
子どもたちの将来を真剣に考えている大人の言葉です。
そして甘えるどころか、あの子どもたちは今、日本一強い。

すごい町でした。
素晴らしい人々でした。 

帰りは石巻まで、ほとんど街灯もなく真っ暗な不安な道でしたが、
行きにあれほど繋がらなかった携帯のカーナビシステムが、
石巻のインターまでずっと途切れず、導いてくれました。


震災は、まだ終わっていない。
やっと、1からのラインなんだ。
だけど、町の力と人の力を信じている。
また、必ず行きます、女川に。 

We ❤ 女川!!! 
1日も早い、町の再建を心より、お祈りいたします。 

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この記事へのコメント

1. Posted by http://pinterest.com/bottegavenetan/   August 21, 2013 13:10
だけど、町の力と人の力を信じている
2. Posted by tac   January 08, 2014 17:15
5 「被災した事に甘えてはいけない」

足掻いてるだけで前に進めてない。
この歯痒さをずっとカラダのせいにしてきました。
病気に甘えてる自分が恥ずかしくなります。

気を引き締めて強い大人になるぞ!

はせがわです。
覚えてます?
3. Posted by naco   January 09, 2014 08:36
>tacさま

覚えてるも何も。いつも、すぐそこに居るじゃないですか。笑
今年もよろしくお願いします。読んで下さってありがとう。

わたしもまた、tacさんの抱える苦しみは本当の意味では分からないのだと知っています。
でも必要なのは同情じゃないですね。
自分が精いっぱいやることなんだと。
彼らを見ていたら、誰でも、元気をもらいます。
4. Posted by tac   January 09, 2014 22:32
そうですね、結局は全部自分次第だと思います。
そこがしっかりしてないと、何も始まらない。

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